みなさんは上手に質問していますか?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第72回
~『質問力 話し上手はここがちがう』(斎藤孝著)を読んで学んだこと~
 
上手に質問する能力は誰でも身につけることができます
 
みなさんは、仕事やパーティーなどで初対面の人と一緒にいて間がもたないなと思ったことはありませんか?ただ、これはお互いがまだ相手のことを十分に知らないわけですから無理もありません。このような時の相手に対する質問も、ご出身は?どこに住んでいますか?どのようなお仕事をしてらっしゃいますか?など、月並みな質問になり、それを一通り言い終わると話題が無くなって困ってしまいます。会話は共通の話題が無いとなかなか続くものではありません。もちろん人にもよるでしょうし、誰でも初対面の人と意気投合して話が終わらなかったという経験はあると思いますが、たいていは、初対面で他人とそこまで打ち解けることは少ないでしょう。
 
一方で、このようなあまり親しくない関係だけでなく、家族や恋人、友人のようなある程度親しい関係であっても、話が盛り上がる時がある一方で、どのような話題を振ればいいのかわからず、間がもたないまではいかなくても、間延びしてしまうことがあります。それもそのはずで、親しい間柄や長い付き合いだとは言っても、違う人間ですので、相手のすべてを知っているわけではありません。当然、出会う前や生まれる前のことは、意識して相手に聞かなければ相手もそうそう答えませんし、それらに関する話にもなりません。もっとも、その人がよっぽど話好きで常にしゃべっているような人なら別ですが……。
 
いずれにせよ、本書の著者は、相手とのコミュニケーションを円滑にする手段の一つとして、質問力に焦点をあてています。あの人は話し上手だ、聞き上手だ、という話はよく耳にすると思いますが、ほとんどの人は、質問の仕方によって相手の答えが変わり、それがコミュニケーション全体とその成果にどのような影響を与えるかまで意識していないと思います。
 
ちなみに、その質問力は、特別な能力ではなく、勉強すれば誰でも習得できる能力であるというところに救いがありますが、ごたくはこの辺にして、本書を読んで特に気になった部分を以下に引用します。
 
 
コピーライターの資質を一瞬で見抜く質問
 
(中略)仲畑さんの質問は「あなたがいいと思うコピーを10個書いてください」というものである。

(中略)問いの構造がしっかりしているので、その業界ごとに変化させればいい。たまたま出た質問ではなく、よく練られた、構造がすぐれている質問である。

そもそもコピーを10個あげられない人がいれば勉強不足である。(中略)

母集団が20個から10個を選んだのか、1000個から10個を選んだのかで、その10個は違ってくる。10個だせるかどうかも重要だが、選んだ10個の母集団も重要である。(中略)

質問は網だ。しっかり作っておけば、いい魚がとれる。
 
『質問力 話し上手はここがちがう』P48~P51
 
 
相手が苦労したところに共感する
 
(中略)淀川長治が日曜洋画劇場を15年間やっていると言った時、黒柳徹子はすかさず、「でも800本。その中のすべての映画が……」と800という具体的な数字をあげている。そのことで、相手の仕事の大きさへの共感を示し、敬意を伝えているのだ。

大切なのは、相手がいちばん苦労したことをとりあえずくみ取ることである。論文の審査などでも、些末な部分ばかり批判し、著者がいちばんエネルギーをかけたところをまったくノーカウントにする人がいる。これは間違った評価の仕方だと私は思う。その人間がいちばん力を入れている部分をしっかり認めることがコミュニケーションには必要である。(中略)
 
『質問力 話し上手はここがちがう』P95~P98
 
 
具体的な話と抽象的な話をつなぐ
 
黒柳徹子は相手のよいポイントをほめて、話を次に展開していくやり方が上手だ。「淀川先生は、素晴らしい美意識をお持ちですが、そういう美も映画ではとても大切ですね」とふる。一見質問には見えないが、「そういう美が映画には大切ですね」と言われれば、当然「美」について話すことになるので、話をふったことになる。これが「映画における美とはどういうものでしょう?」という質問だと固くなってしまう。どうしても普遍的、一般的な話になってしまい、論理的な説明になってしまうだろう。

コミュニケーションのコツはその人の奥底にある経験を引きずりだしてくるところにある(後略)
 
『質問力 話し上手はここがちがう』P98~P101
 
 
1つでもインスピレーションを得られれば成功
 
宇多田の方もキイスに対してきちんと質問している。「何かを創るというのは、孤独なプロセスだと思います?」という一気に本質に迫る深い質問である。創造的な活動はチームでやることもあるが、ともかく創造活動は孤独なプロセスではないのかと問いかけているのだ。彼女自身が若いのに、その孤独さと向き合わなければならない辛さを抱えているからだろう。

するとキイスは自分の頭を指して「もちろん、すべてがここで創られるんだから」と答えている。「自分の一部が自分を離れて、すべてを見ているような感覚がある。もう一人の自分がいるという感覚、それが多重人格につながる。いずれにしても分裂しているような感覚がある」と言うと、宇多田は「そういうの、私にもありますよ。これって曲に書けますね」という言い方をする。
つまり宇多田はここで1つインスピレーションを得たわけである。曲を作っているときに、自分の一部が離れて別の人格になっている。このモチーフを1つの曲に表現できそうだというインスピレーションを得たわけだ。これだけでも対談の意味があっただろう。
1つでもインスピレーションを得ることができれば、コミュニケーションは完全に成功である。(中略)

キイスは笑って「そりゃあいい。だけど音楽家はどうやって曲を作るのかな。あとで本の作り方を話すから、教えてくれないか」と質問する。これはこの対談のメインテーマである。曲を作る創作活動のプロセスと本を書く時のプロセスを照らし合わせながら、お互いに本質的な対話をしようという意思が、特にダニエル・キイスの方にあると思う。

「あとで本の作り方を話すから」というのは、みごとなアメリカ的なギブアンドテイクの世界。世の中には一方的に聞いて、聞いて聞き続ける人もいる。

話す方も最初はいいが、だんだん疲れて来る。ちょっとこちらから持ち出しが多すぎるのではないかということもあるし、いったいそれがどう生きるのかもわからない。まるで月夜の海に石を投げるようなもので、どこに落ちたのかもわからない。そういう感じになるので、キイスの質問の仕方は非常に参考になる。
 
『質問力 話し上手はここがちがう』P178~P181
 
 
いずれの引用部分にも共通しているのは、相手の本質的なことを理解することです。また、普段から意識している人がどれだけいるかわかりませんが、わざわざ時間と労力をかけて、その日のその時間に相手と会話する以上、やはり、その会話によってお互いに何か有益な発見がないと非常に虚しいです。お互いあるいは参加した人にとって光るものが何もなければ、恐らく2回目はないでしょう。
 
読書オタクシリーズの中で、読書とは著者との無言の対話である。と、再三にわたって書かせていただいておりますが、以前友人が、本は、わずか1000円前後のお金でこれだけの情報が手に入り、しかも、その中でたった一行でも自分にとって有益な内容が書かれていれば、それだけで儲けもんだ。というようなことを言っていました。私もまったく同感だと思います。
 
ちなみに、私の記憶力の問題かもしれませんが、本を一冊読んだその時はふんふんと感動していても、ほとんどの内容は一ヶ月もすれば忘れてしまいます。ましてや、1、2年後に読み返した時などは、一度読んだことがある本であるにも関わらず、このようなことは初めて聞いた。この人は良いことを言うなと。と、思います。もちろん、あれ?この話はどこかで聞いたことがあるような、もしや一度読んだことがある本ではないか?と、気づく時もありますが、全般的な内容自体は覚えていないため、結局は新しい本を読んだような新鮮さを覚えます。
 
それもそのはずで、本書は文庫本ですが、本書でも233ページもありますので、飛ばし読みしてもそれなりの労力がかかりますし、すべて読んだら普通の人なら何時間もかかります。これは言わば、昼食後から夕食の時間までぶっ続けで会議していたようなもので、議事録もつけずに会議していたらすべての内容を覚えているのは困難でしょう。
 
ただ、議事録というものは会議の内容をすべて記録する必要はなく、要点だけ、つまり、会議で決めたことや自分や相手に課せられた宿題だけを議事録に盛り込めば事足ります。そういう意味では、一冊の本を読んでも内容をすべて覚えている必要はなく、自分なりを要点だけおさえていれば十分です。これは対面の会話も同じで、相手や他の参加者の会話をすべて覚えている必要はありません。要は、参加してよかったと思えるような発見があるかどうかが大事です。
 
著者の言う質問力とは、その発見をしやすくするためのツールだと思います。ただ集まってガヤガヤ話していても気づくことがあるかもしれませんが、質問する能力を鍛えることで、大事な会話の時間を無駄に終わらせず、自分にとって有益な答えを相手から引き出せる確率が上がります。また、質問力を上げるということは、同時に理解力を上げることにもつながると思います。少なくとも、相手の立場に立って質問を考えることで、自分が回答者になったときに、相手が何を欲してこのような質問をしてくるのかを考えることにもつながるからです。
 
みなさんも、これを機に、相手に質問することについて考えてみてはいかがでしょうか?
 
一介の読書オタクより
 
 
 
参考図書:『質問力 話し上手はここがちがう』

発行年月:2010年12月

著者:斎藤考(さいとう・たかし)

発行所:ちくま文庫
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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