リーダーシップとは何か?

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読書オタクが語る日本図書シリーズ 第75回
~『リーダーシップの本質』(堀紘一著)を読んで学んだこと~
 
リーダーとは、すべての責任を取ること
 
本書の著者である堀紘一さんの本は何冊も読んでいますが、読書オタクシリーズで取り上げるのは今回が初めてです。というより、てっきり取り上げていたと思い込んでいました。
 
彼が書く本はジャンルが多岐にわたり、語り口調もざっくばらんで好きなのですが、本書はその中でも硬派な分類になると思います。
 
リーダーシップに関する本は数多くありますが、たいていは、自分はこうしてきました。あるいは、他人のリーダーシップの評価に終始してしまいがちです。つまり、自分中心か他人中心でバランスを欠いている場合が多いのですが、著者は長年コンサルタントをやってきて多くの経営トップやリーダーを見てきていることに加え、自分自身も経営者として長年リーダーシップを発揮してきているため、読んでいて自分と他人のリーダーシップの事例のバランスがいいなと感じました。
 
全部取り上げたいところですが、今回も特に気になったところを引用します。
 
 
【この本のポイント!】
 
1-10

リーダーは最高の責任を負う最終的存在であること
 
かつて帝人の大屋晋三氏は、「社長と副社長の間の距離は、副社長と運転手の距離より長い」と語った。強大な権限を持つリーダーには、きわめて大きな責任が課せられる。たとえ副社長という、会社のなかでは二番目に思い責任を担う人間であっても、その責任は社長とは比べものにならないほど、はるかに軽いのである。

社長と副社長以下の人間の決定的な違いは、会社のあらゆる責任を社長は負わなければいけないのに対し、それ以外の社員は、何かうまくいかないことの責任を他人に転嫁することができるところにある。

もし常務が、商品の偽装工作のような、反社会的な事業活動を社長に黙って行っていたとしても、社長は、「自分は知らなかった」と責任を逃れることはできない。そういうことが起こり得る状況を見逃し、管理監督責任を怠った責任は重大であるということになる。

会社に何かまずいことがあったとき、社長に責任がないということはあり得ないのである。(後略)
 
『リーダーシップの本質』P49~P51
1-11

リーダーはつねに孤独の中で責務を全うしなければならない
 
リーダーは組織の最終意思を示す唯一の存在であり、その重荷をつねに一人で負わなければならない。

リーダーに入ってくる話の九割以上は嫌な話である。問題が発生したというものばかりだ。とくに突然来る話は100パーセント悪い話と思って間違いない。(中略)

また、これは私も日頃から感じていることだが、しばらくいいことが続いたあと、ふっと「そろそろ悪いことが起こりそうだな」と思うことがあり、この嫌な予感はよく当たるものだ。逆に、「これは大成功するんじゃないか」という期待を込めたようなよい感触のほうはなかなか当たらない。おそらく私だけでなく、ほとんどの経営者がそうなのではないか。(中略)

私は講演の後、ある商社の組合役員からこんな話を聞いたことがある。

その人は、常務と一緒にニューヨークに出張することになった。すると常務は、「僕も君たちと同じエコノミーでいいよ」と言って、エコノミーに乗っていったというのである。組合役員の、「堀さんはこのことをどう考えられますか」という問いかけに私は答えて言った。

「歯に衣着せずに言えば、その常務は最低だと思います。気さくで偉ぶらないと好感を抱く人がいるかもしれませんが、それは間違いです。彼は出張するメンバーの最高責任者なんでしょう。それなら、会議では必死になって相手の言うことを聴き、速やかに正しい判断を下さなければいけない。その出張期間中は体調を整え、頭脳明瞭の状態を維持する必要があるでしょう。長旅、時差の中でそれは大変なことですよ。だからファーストクラスに乗って、頭も体も休養させて翌日からの会議に備えるべきです。

自分の職務を全うするためには、ファーストクラスは贅沢でも何でもないですよ。それをエコノミーでいいと言うのは、『僕には大したことはできないんだ。君らと変わらないよ』と言っているようなもので、情けない話ですよ。いくら商社が厳しい状況にあるからといって、そんなところで経費節減に協力する程度のことしか役に立たないのでは、常務は務まりませんね。平社員に戻ったほうがいい」

意外なことに、かの組合役員は「そうでしょう。僕もそう思っていたんです」と大賛成を表明してくれた。(中略)

リーダーは組織のメンバーと責任を分かち合うことはできない。リーダーの孤独をメンバーはほとんど理解することがないが、それは、自分以外のメンバーの誰一人として、自分の今の地位、社長の座に就いたことがないからだ。平社員や部課長だけでなく、常務も専務も副社長も社長を経験したことがないため、いま一つ社長の気持ちや考え方をわかってくれない。(中略)

これまでいろいろな会社を見てきた経験からいえば、これからの日本の大企業では、若いときに子会社の社長を経験させてから、本社の社長にしていくやり方が、社長を育てる方法としては一番いいと思う。

政治家であれば、アメリカの大統領によくあるように、若いうちに県知事を経験してから、総理大臣になっていくやり方がいいのではないか。

それが、組織の最終決定という重荷を正しく担うことをよりよく学ぶ最良の道であろう。
 
『リーダーシップの本質』P51~P55
 
3-3

リーダーは手本を示す範でなければならない
 
山本五十六が言ったといわれてきた「やってみて、言って聞かせてさせてみて、誉めてやらねば人は動かじ」は名言中の名言だとしみじみ思う。ここにはリーダーシップの要点が凝縮している。(後略)
 
『リーダーシップの本質』P100~P103
 
 
本引用箇所に書かれている内容は、正直すべて同意できるわけではありません。たとえば、突然来る話は100%悪い知らせ、というところと、リーダーはファーストクラスに乗るべきというところ(ビジネスクラスでも十分では?と思う私は甘いのかもしれませんが。)は同意できませんし、ちょっと誇張し過ぎかなとも思いますが、この引用箇所を読んで改めて感じたのは、リーダーとは、メンバーを引っ張っていくという力強さももちろん大事ですが、最後の砦というか、殿(しんがり)的な役割も担っていると思うのです。
 
殿とは、戦で負けた方が退却する時に、味方を逃がすために、最後尾にあって追撃してくる敵を防ぐ役割を担うことです。もちろん、一番危険な役目であり、死ぬ確率が一番高い役目であると共に、味方が生きるか死ぬかは殿の働き次第であるともいえ、一番責任が重い部署でもあります。
 
戦国時代の有名な退却戦に「金ヶ崎の退き口」というのがあります。織田軍が越前の朝倉氏を攻めようという時に、妹婿である近江の浅井長政の裏切りが判明したため、前の朝倉と後ろの浅井から挟み撃ちにされる恐れがあり、信長が退却を決断したという事件です。
 
この時、総大将の信長は、殿を秀吉や光秀などに任せて、部下をすべて置き去りにして京都へ逃げ帰りました。そして、数か月後に体制を整えて姉川の合戦でリベンジしました。
この時の信長の行為は、この時の信長だったから許されたわけで、単純に状況も時代も異なる現代の会社や組織に当てはめることはできませんが、今であれば、会社に大問題が発生したときは社長は雲隠れせず、すばやく記者会見を開いて炎上するのを抑えるというのが一般的なようです。
 
ただ、問題の大きさや内容によっては、安易に組織のトップが出てくるのではなく、必要以上のヒートアップが過ぎ去り、ほとぼりが冷めるのを待ってから出てきて、適切に処理してその責任を全うするというやり方もあると思います。このように、問題発生時の責任の取り方はケースバイケースですが、問題が発生したとき、その責任のほとんどをトップが取ることになるというのは世界共通です。
 
このため、規模の大小にかかわらず、トップをやってるリーダーとメンバーの中のリーダーでは、自然と考え方や行動が自然と異なってくるのは当然だと思います。しかも、それが毎日続くのですから、長い年月を経ると大きな差となって表れてくるでしょう。
 
 
このように、リーダーは殿の役割も担っていますが、他方で、率先してメンバーを引っ張っていく責任も負っています。よく、みんなで話し合って合意したものを進めていこうというボトムアップ型のリーダーシップについて書かれた本がありますが、これは、単にリーダーとしてのプレッシャーから逃れ、無責任なことをしているだけだと思います。
 
また、ボトムアップ型のリーダーシップが成り立つのは大企業や政府機関などの大きな組織であり、それであっても、各セグメントの中にはリーダーとメンバーがおり、それらのリーダーがしっかりとリーダーシップを発揮してこそ、その組織が円滑に動きます。場合によっては強引さやメンバーを鼓舞することも必要です。また、恨まれるのはダメですが、時として嫌われることも覚悟する必要があります。
 
最後に引用した山本五十六が言ったとされる一説は、かつて私自身も上司から言われて感心したことばです。今更になってパクリだったのかと驚きましたが(笑)、著者も言っているように、リーダーシップの基本が詰め込まれていると思います。
 
いずれにせよ、今リーダーをやっている人、これからリーダーを目指す人にはぜひ読んでいただきたい本の一つです。本書に限ってはぜひ読破してください!
 
一介の読書オタクより
 
 
参考図書:『新版 リーダーシップの本質』

発行年月:2009年1月

著者:堀紘一(ほり・こういち)

発行所:ダイヤモンド社
※本記事の写真はすべてイメージです。本記事は参考図書の一部を引用したうえで、個人的な感想を述べているに過ぎません。参考図書の実際の内容は、読者ご自身によりご確認ください。

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